ちあきなおみ 黄昏のビギン

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ちあきなおみ 黄昏のビギン 日本のスタンダードナンバーの誕生

美空ひばりがちあきなおみに言ったそうです。

「あんた、歌うまいね」と。

実に純粋に誉めたのでございましょう。

ちあきなおみは、ジャズィーなデビュー曲『雨に濡れた慕情』からスタートし、歌謡曲、ポップス、演歌、ジャズ、シャンソン、そしてファドまでも。
あらゆるジャンルの曲を歌いこなしてまいりました。
共通して言えるのは、「ちあきなおみの歌」として歌い上げていたのです。

これは、彼女のオリジナルナンバーに留まりません。
ちあきなおみは、他人の曲のカバーにもたくさん取り組みました。

古くは小畑実の『星影の小径』、石原裕次郎の『夜霧よ今夜もありがとう』などの昭和歌謡。
ステージで披露した曲も合わせると、数限りなく歌ってきました。
そこには、「ヒット曲を追うのではなく、自分の歌いたい曲をじっくり歌いたい」と言う彼女のポリシーがうかがえます。

全ての曲を彼女のものにし、余裕をもった声量で、含みをもたせ、聴く者を誘い込むように歌う。
じっくり聞かせるのでございます。

時にはドスが利いた声でストーリを聞かせ、自らの感情移入ではなく、彼女自身は決して泣かなず、泣かされるのは聴き手でございます。
他人の持ち歌を多数歌っても、そのどれもがオリジナル曲を凌駕して、ちあきなおみの歌にしてしまっています。

そしてこの曲、『黄昏のビギン』は、水原弘が『黒い花びら』に続くセカンドシングル『黒い落ち葉』のB面でございました。
長い年月息を潜めておりましたが、ちあきなおみが91年に『すたんだーど・なんばー』という昭和の流行歌をカバーしたアルバムで取り上げ、甦ったのでございます。

CM音楽にたびたび使われ、「おっ、いい歌だ。誰の曲」?」と言う声が広まり、改めてちあきなおみの歌声を「絶品」と言わしめたのでございます。

日本特有の音楽文化ゆえ、なかなかスタンダードナンバーが生まれない土壌にありましたが、永六輔と中村八大の六・八コンビによる、「黄昏のビギン」が長い時を超えスタンダード・ソングとなりおおせたことは、実に画期的なことでございました。

『黄昏のビギン』をこれまでカバーした人たちは、ちあきなおみ、中村美律子、憂歌団の木村充揮、石川さゆり、さだまさし、菅原洋一、中森明菜、中村中、稲垣潤一、岩崎宏美、鈴木雅・鈴木聖美、小野リサ、松原すみれ(セルジオ・メンデスとのコラボ)、薬師丸ひろ子といった、いずれ劣らぬ実力派が並びます。

歌は世につれ世は歌につれ、幾世代もの歌い手に歌い継がれ、歌い手や演奏家によっていつも新しい息吹が加えられていることでございましょう。

本当にいい曲ですね。

特集:ちあきなおみをもう一度

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