白薩摩と黒薩摩 ふたつの魅力 薩摩焼

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白薩摩と黒薩摩 ふたつの魅力 薩摩焼

薩摩焼で思い浮かべるのは、乳白色(白に近いクリ-ム色)の生地に、きめ細かな貫入が入り、赤や青、緑や金彩で動植物などの文様を施した、繊細で豪華な白もんと呼ばれる「白薩摩」。
もうひとつは焼酎の酒器で知られている黒もんと呼ばれる「黒薩摩」。
どちらも薩摩焼ですが、なぜこのような対極の違いがあるのでしょうか。

【薩摩焼の歴史】

国の伝統的工芸品にも指定されている薩摩焼(さつまやき)は、鹿児島県内で焼かれる陶磁器。
約400年前、豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)に参加した薩摩藩十七代藩主島津義弘が80余名の李朝陶工を連れ帰ったことに始まります。
最高の陶芸技術を身につけた彼らが薩摩の各地に開窯し、数々の優れモノを輩出してきました。

【薩摩焼の特徴】

薩摩焼には大きくふたつに大別できます。
ひとつ目は白い薩摩焼「白薩摩」です。
0012.薩摩焼3
白というより、柔らかな乳白色の下じに見事な絵付の焼きものです。
誰の目からも気品漂う絢爛豪華な作品でございます。
この「白薩摩」。俗に言う「白もん」で藩の御用か幕府への献上品に使われた「上手物」です。
大量生産によらず、茶器など逸品ずつ丁寧に作られたものですね。
有田焼の「鍋島様式」と同じです。
道理で華やか作品です。
実は、薩摩の土は、硫化鉄を多く含むため茶褐色なのです。
これを陶工たちは土の精製を繰り返して鉄分を取り除き、白い焼きものを作りあげました。
白薩摩の白色は、釉薬によるものではなく土の地肌の色なのです。
だから柔らかな温かみのある白なのですね。
白薩摩は江戸時代のころから大名や西洋人に特に観賞用の陶器として愛され、海外では「SATSUMA」の名で親しまれてきました。
白薩摩をより魅力的に輝かせる秘密がありました。
透明な釉薬のガラス質の面に入った微細なヒビ、「貫入」です。
これは陶器を焼くとき、生地と釉薬の収縮率の差から生まれます。
白い磁器では、「貫入」は茶じみが入るため敬遠されていましたが、観賞用の白薩摩はそれを土と炎が生み出す美しき風景と考えました。

さてもうひとつの薩摩焼がございます。
黒い焼きものに代表される「黒薩摩」と呼ばれるモノです。
0012.薩摩焼1
ざらついて黒光りした野趣あふれる生地で、どっしりとして素朴な佇まいの器です。
この「黒薩摩」は「白もん」と言われる庶民の日用使いの「下手物」です。
前述の「上手物」の「白薩摩」は幕府時代には庶民の使用が禁じられていました。
薩摩の陶工たちは、この技術をなんとか庶民のためにと考えたのでしょう。
もともと鉄分の多い薩摩の土を用いるため漆黒の光沢を持ち、素朴で重厚な面持ちが特徴です。
やや厚手の生地に黒釉の深みも美しい、日用雑器になりました。
湯呑、皿はもちろん、片口や焼酎の酒器として有名な黒千代香(クロジョカ)もございます。
この黒千代香は耐熱性に優れ、直接火にかけて癇ができるのです。
自宅にひとつあれば晩酌も楽しくなりそうです。

【薩摩ボタン】

幕府要人や西洋人に愛された薩摩焼は海外でも人気でした。
そこでちょっと知られていない薩摩焼を紹介しましょう。
「薩摩ボタン」です。
パリ万博に白薩摩が出品され評価が高まった時期に、イギリスやフランスでは装飾ボタンがはやっていました。
それが薩摩藩の目に留まり、白薩摩のボタンも作って欧米に輸出したのです。
欧米にはアンティークボタンのコレクターがたくさんおり、薩摩ボタンは実に彼らのとってストライクだったのでしょう。 大人気になりました。
しかし薩摩ボタンはすべて輸出用に作られているので、日本には全く流通しておらず私達日本人には逆に知られていなかったのでした。
薩摩焼のボタンは、輸出のために作られましたがとても日本的で、日本の美が凝縮されておりました。
日本の伝統的な花鳥風月が描かれており、薩摩ボタンを通じて日本の風景が伝えられていきました。

様々な物語が凝縮した薩摩焼。
さて、一度窯元を訪ねてみてはどうでしょうか。

参考文献
『やきものの事典』/成美道出版
『やきもの全国有名窯場』/南大路豊/株式会社西東社
『やきものの基礎知識』/前山博志/株式会社学習研究社
『やきものの旅「東日本」』/安藤典子/日本写真印刷株式会社
『やきものの旅「西日本」』//日本写真印刷株式会社
『中島誠之助のやきもの鑑定』/中島誠之助/株式会社双葉社

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