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西のやきものの代名詞 唐津焼
東日本では「せともの」と言いますが、西日本では「からつもの」と呼びます。
多くの庶民に古からも愛され浸透している証拠でございましょう。
唐津焼(からつやき)は、近世初期以来、現在の佐賀県東部・長崎県北部で焼造された陶器の総称でございます。
ざんぐりとした渋い土味と叩き作り、鉄絵や土灰釉は、野趣に富む味わいとして侘茶の世界で愛されてきました。
一時は有田磁器の登場で藩の御用窯を残しほとんど衰退し危機を迎えましたが、しかし戦後になり、土味を生かした飾らぬ魅力が再燃して復活。
「一楽二萩三唐津」と言われるように「日本三大茶陶器」として今も茶陶として愛されています。
【唐津焼の歴史】
唐津焼自体の始まりは室町時代後期と言われています。
この唐津焼、隣接する有田焼とは切っても切れない関係がありました。
今日のような魅力ある唐津焼が排出されるようになったのは、
実質16世紀末から17世紀初めにかけてと言われています。
豊臣秀吉が朝鮮出兵した際(いわゆる文禄・慶長の役)に、朝鮮半島から同行してきた陶工たちが祖国の技術を伝え、いくつかの窯を形成していきます。
以来飛躍的に生産性が向上し元和年間(1615~1624年)には最盛期を迎えたのでした。
ところがその窯のうちのひとつを開窯していた陶工・李参平(りさんぺい)が有田泉山で磁鉱石を発見。
陶器はやがて磁器へと転換して有名な有田焼を誕生させます。
釜場の林立により、燃料の薪の乱伐にが起こり、山野の荒廃が深刻な問題となってきました。
そこで鍋島藩は藩内の窯場の整理・統合をすすめ、窯場を有田に集約させたのでした。
さぁ、影響をもろに受けたのが唐津です。
御用窯を残しほかの窯は消滅してしまいました。
同じ朝鮮の陶工によるやきもの技術は有田と唐津の二つのやきもの産地の盛衰に相反する影響を与えたのでございます。
絶滅の危機にひんした唐津焼ですが、そこで現れた救世主がおりました。
人間国宝の中里無庵が「叩き作り」などの伝統的技法を復活させ再興を成功させました。
現在は約50の窯があり、時代の移り変わりを乗り越えて、第一級の茶道具を提供し続けております。
【唐津焼の特徴】
唐津焼の特徴の一つは、技法にあります。
蹴轆轤、叩き作りと言った古唐津から伝わる伝統的な技法です。
もうひとつは窯にあります。
連房式登窯という大規模な窯を使い、1300度の高温で一気に焼き締めます。
これが茶器として名声を受けた、非常に素朴で独特の渋味を醸し出しているのです。
李朝の技法を導入した唐津焼は製造方法や作風にも大きく影響を受けているのです。
広範囲に分散していった唐津焼にはいろいろな種類がございますが、主だったものをいくつかご紹介しましょう。
○絵唐津
唐津焼の中で最もポピュラーで唐津らしい野趣が生かされています。。
李朝風の絵文様をベースに、風景、草花、動物、幾何学模様など、多様な絵柄に魅せられます。
絵唐津の作品の多くは、鉄絵の上に土灰混じりの長石釉が掛かり、焼成具合によって白化粧することもあります。
飾らない線と色が人気です。
○朝鮮唐津と班唐津
黒飴釉、藁灰釉などのオーソドックスな釉薬使いの技を使った表情豊かな美。
鉄分を含む黒飴釉を掛けた上から白色の藁灰釉を流し、風景を表現したのが挑戦唐津の特徴。
水差、花入、徳利、ぐい吞などの作品に多く見られます。
班唐津は、器表に藁灰釉を掛け、白濁色のむら状に焼き上がり、淡い青色の斑点が混じるのが特徴。
壺、茶碗、皿、ぐい吞が作られています。
このふたつ、どちらも魅力的な唐津焼でございます。
○三島唐津
李朝の粉青器の装飾技法を倣った象嵌文様。
成形した器が生乾きの時に刻印の木型で文様を押し、乾いた後に白泥を埋め込み、はみ出した部分を拭き取って施釉・焼成します。
名称の由来は三島大社の三島暦に似ているため。
李朝から影響を受け、唐津独自の器になりました。
○粉引唐津
粉引きは多くの窯場で使用されている技法のひとつです。
柔らかい風合いの白化粧を施した粉引は、シンプルながらも美しく、使いやすい実用品です。
褐色の粘土を使用し、生乾きのうちに化粧土を全面に掛けて乾燥させた後、施釉・焼成します。
鉄絵を施せば粉引絵唐津のなります。
○掻き落とし唐津
成形した器に、白土や色の異なる釉薬を塗って化粧し、生乾きのうちに文様に沿ってヘラで白土を掻き落とします。
だから掻き落とし唐津。
筆を使わずに文様を描くのが特徴でございます。
参考文献
『やきものの事典』/成美道出版
『やきもの全国有名窯場』/南大路豊/株式会社西東社
『やきものの基礎知識』/前山博志/株式会社学習研究社
『やきものの旅「東日本」』/安藤典子/日本写真印刷株式会社
『やきものの旅「西日本」』//日本写真印刷株式会社
『中島誠之助のやきもの鑑定』/中島誠之助/株式会社双葉社
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