伊東四朗 テレビCMでブレイク
- 2016/5/19
- 伊東四朗劇場
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伊東四朗 テレビCMでブレイク
四朗ちゃん、「オレで大丈夫なの?」って思うことが良くあるらしいんだけど。
何かの役をお願いされたときにね。
でも、流石にこの依頼が来たときは、ホントに驚いたんですって。
CMよ。
「白子のり」さんからCMの話が来たんだって。
「ぜひに」って。
最初に演ったのが、夏のお中元のシリーズね。
四朗ちゃんが会社の課長で、「ただいま」って家に帰ってくると玄関の下駄箱の上に白子のりが置いてあるの。
「おっ、うちにも来たか。どれどれ」ってんで開けちゃったら、奥から娘が表れて、「あら、お父さん、それはお隣の預かりものよ」って言われちゃう。
その時、四朗ちゃんの「えっ?」って言う顔がアップになって、次のカットでお隣の家が帰ってくる。っていうヤツね。
次がやっぱりお歳暮かお中元の新バージョン。
喫茶店で四朗ちゃん扮する課長が、部下の若者とコーヒーを飲みながら白子のりを取り出して、「君、白子のり食べたことあるよね?」って聞くと、部下の人が普通にそっけなく「いいえ」って言うの。
すると、四朗ちゃんがガーンってなって、周りに暗雲が垂れ込めて、ザンザン、ザザザーンって暗ーい音楽なんかが流れて、手に持ったコーヒーカップがカタカタって震えるって言う、短いけどすごいインパクトがあったわ。
そしたら、続編があって、同じ監督さんの演出なのね。
前回の若い部下の人とエレベーターから降りて廊下を歩きながら四朗ちゃんが言うわけ。
「君、もちろんこれだけ経ったんだから白子のり食べたよね」って。
そしたら部下の人がまた「いいえ」って素っ気なく返事するの。
で、また周りが暗くなって、暗ーい音楽が流れて、エレベーターの中にいた部下や他の人や廊下を歩いていた人もぜーんぶいなくなっちゃう。
またまたすごいインパクト。
白子のり」さんのCMはいろんなバージョンを撮ったわね。
普通CMって明るいイメージがあるんだけど、その監督さんはこの世に白子のりを食べたことがない人がいるっていう「恐怖」を出したかったんだって。
どうもこのCMの評判が良かったらしくて、2年ぐらいしたら、今度はヤクルトさんから「タフマン」のCMの話が来ちゃった。1985年のことよ。
あっ、これも同じ監督さん。
いろいろなバージョンがあったけど、本人が忘れられないCMがあるって。
CF撮影の前日になっても台本が届かないんで、どうなってるのってマネージャーに聞いたら、「台本はないみたいですよ」だって。
じゃぁ今日は撮影中しかなって思っていたら、マネージャーが「よくわからないんですけど、最初は会社の洗面所のシーンらしいんで、スタイリストさんが用意したスーツを着てスタンバイしてください」って言われて。
で、スタジオに入って監督さんに台本下さいって言ったら、「今回の撮影は台本なしでやりたいんですよ」って言って、洗面所の前に連れていくのね。
設定はある会社の洗面所。ひとりの人が顔を洗ったり、鏡を見たりして、返ろうとしたら、そこで四朗ちゃんがひとこと言うんだって。
四朗ちゃん、役者は台本にあるセリフを喋るのが役目なのに、自分の役を聞くと「伊東さんはなんか言う役」だって。
しょうがないから、その人が髭面で猫背だったから、そのことを二言三言喋ったら、「オッケー、良かったですよ」って。
で、次にまた違う人を連れてきた。
なんかかんかで、三人やったところで、今度はサウナの設定。
サウナの中にふたりの男の人が暑がっているんで、そこでひとことっていうわけ。
また次には、バーのカウンターで、サラリーマンがママ相手にぼやいているシーン。
隣に座ってなんか喋るのが役目。
四朗ちゃんもう疲れちゃって疲れちゃって。
さすがに文句言ったらしいわ。
でも不思議なモノよね。
そのCFがその年の『サンケイCFタレント大賞』を取っちゃった。
受賞パーティーでその監督さんに文句言おうにも言えなかったって。
だって賞を受賞しちゃったからね。
その監督さん誰かって?
CM業界の鬼才「市川準」さんよ。
タフマンのCMでは無理難題ばっかりだったらしいけど、四朗ちゃん、えらいからなんでも演ったわね。
でも一度「まいった」ってことがあったのよ。
当時住んでいた吉祥寺の駅のそばでタフマンのCM撮影していたのね。
派手な衣装着て。知ってるでしょ、タフマンの衣装なんだから派手なのは。
で、たまたま奥さんが通りがかって人だかりをのぞき込んだら、四朗ちゃんと目が合っちゃった。
家に帰ったら、「お父さんも大変ね」って。
何も言えなかったみたい。
ヤクルトの広告の担当者の人の話だとタフマンのCMは「伊東四朗劇場」なんですって。
「伊東四朗」と「あんたがたタフマン♪」の二つで出来ているっていうわけ。
「広告批評」の編集長をしていた天野祐吉さんが、「伊東四朗は、ああいうチンドン屋的な芸をやらせたら右に出る人はいないね。タフマンのCMを還暦過ぎてもやっていたら大したもんだ」って書いていたらしいけど、喜寿過ぎたって演ってるもんね。
以前ラジオ番組で自分のことを「タフマン伊東」って名乗ったこともあるくらい。
最初の撮影の頃はどうなることかと思ったけど、今じゃぁ結構気に入ってるみたいね。
特集:伊東四朗劇場
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